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2006年05月12日

とち

[トチ/栃:トチノキ科:広葉樹/散孔材]

この木は私個人的に、かなり好きな木のひとつです。(実際の巨木に触れたことがあるからかもしれません……。)

色の白い優しい雰囲気を持っていて、材も軟らかく、刃の当たりもやさしく、鉋のかかりが良い、比較的加工しやすい材です。
昔から「栃の絹肌」と言うらしいです。(絹肌自体を最近手にする機会が少ないので、この例えも、例えたらなくなりつつあるかもしれませんね。)
しいて言えば、女性的な雰囲気を感じます。(こういう例えかたも、下手をすると、セクハラとか、性差別とか言われかねない世の中です。)

じぶんちショールームで普段使っている一枚板のテーブルもこのトチノキなので、愛着もあり余計にそう思うのかも知れません。
毎日、このテーブルで食事をするのですが、数年使い続けたところで飽きたりする気配がありません。
疲れて帰っても、この前に座りお茶を飲むと本当にほっとしますし、家族が揃うとよりいきいきするような気もします。
これは木のテーブルに限らず、どんなテーブルでも日常にあれば同じなのかもしれませんが、私にはこの木の持つ魅力がそれをいっそう強く感じさせてくれるような気がしてなりません。

このトチノキの中でも「縮み杢」といって木目に直交してキラキラと波を打って立体的に見えるような木目をしたものがあり、それは、初めて目にされたら、「なんなんだ、どうなっているんだこれ!?」と思わされる本当に不思議な木目です。
一度、その「縮み杢」の見事な板を使って、ライティングビューローをつくったことがありますが、私自身、そんな見事な杢を見るのは初めてで、まさに「なんなんだ、どうなっているんだこれ!?」という感じでした。
ほんのちいさな端材も捨てるに忍びなく、それを取っておいたものでペンダントヘッドや、携帯ストラップなどのアクセサリーを制作しましたが、そんなちいさなものでも、この杢がハッキリと表われて、なんとも不思議な味を醸し出していました。

トチ板目写真
トチの板目
トチ写真
トチの柾目

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2006年05月01日

なら

[ナラ/楢:ブナ科:広葉樹/環孔材]

家具の材料に使うの広葉樹の中ではかなりメジャーな存在ではないでしょうか。

私にとって、このナラの木というのは、職業技術校で鉋けずりを覚え始めたころ、初めて出会った手強い相手という想い出があります。
鉋けずりも覚え始めは、針葉樹の柾目などから、タモやセンなど広葉樹でも比較的柔らかく削りやすいもので練習するのですが、ある程度それらが削れるようになると、違う材も削ってみたくなり、端材置き場にあるいろんな材を持ってきて片っ端から削ってみはじめました。
センやタモ、ニレ、クルミなど堅木と呼ばれる広葉樹のなかでも比較的削りやすい部類の材は、材よっては多少鉋も重く感じることがあっても、それなりに削れるものでした。
そんなことで少しはできるようになったと調子に乗った私は、それまでの材とはちょっと雰囲気の違う、見た目に堅そうで、手にするとちょっと重さを感じる材を選び同じように削ってみたのでした。
するとなんだか、今までの材とちょっと違い、なかなかうまく削れないで往生しました。まさに刃が立たないとはよく云ったものです。
その時、手にしたのがこのナラの木だったのです。
覚えはじめの鉋だと刃の出も多く、鉋屑も厚くなってしまい、その分、鉋の引きの抵抗も大きくなります。
そんな状態で、このちょっと堅い木を削るのは難しい。そのうえ、逆目なんかあろうもんなら大変なことです、情けなくって削りあとを正視できません。

そんな初心を思いださせてくれるナラの木の木目のちから強い美しさは、他の木にはなかなか類を見ないと思います。欅なんかとはまた違う力強さで、例えるなら筋肉質でマッチョな感じでしょうか。

ナラ板目写真
ナラの板目
ナラ写真
ナラの柾目

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2006年04月27日

くり

[クリ/栗:ブナ科:広葉樹/環孔材]

栗といえば思い出すのが、栗羊羹、天津甘栗、モンブラン等の甘いお菓子ですね。これは栗の実の話ですが、実も甘いですが、木自身にも甘味の成分が含まれているみたいで、丸ノコで切断加工していると、適度な摩擦熱を帯びて、甘栗をむいたときみたいな甘い香りがすることがあります。栗の実を食べると良く虫に喰われているのに遭遇しますよね、木を加工しててもあんな感じの虫喰いの穴によく遭遇します。さすがにもう虫は出てきませんが…。
用材としての性質は、よく知られているように心材部は腐りにくいので(これはタンニンという成分が多く含まれているからだそうです。ポリフェノールといえばご存じの方も多いのでは?)、建築用土台に使われるそうですが、昨今の建築事情では、栗の土台を使うような家はよっぽどこだわった住宅だと思います。防腐剤や、防虫剤を使わなくてもよいので、シックハウス対策によろしいのでは?(モノが少ないので、一般住宅に使う材料と比べるとちょっと高くなりますが、長い眼で見れば…、中国産や集成したもの市販されている様ですし。)
仕上がり感は、ナラやケヤキと比べると木目や色が素朴な感じで、落ち着いた雰囲気をもってます。わびさび感があるので、和風の空間に置くといい感じだと思います。「シルバーグレーの初老の紳士」といったところでしょうか?


クリの板目

クリの柾目

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2006年04月22日

けやき

[ケヤキ/欅:ニレ科:広葉樹/環孔材]

ケヤキ並木など街中でも見かける、日本では桧、杉に並んでメジャーな木材かもしれません。
木の工房KAKUのある大阪府岸和田市は地車(だんじり)祭で有名ですが、その「だんじり」が総ケヤキ造りなのです。
岸和田市内に「だんじり」を専門でつくる工務店が数軒あり、そこの大工さんのお話では「ここ(岸和田)は日本で一番ケヤキ(それも高級な)が集まるとこなんや!」そうです。実際、工務店が利用する製材所の土場には「農林大臣賞」なんて札の貼られたびっくりするような大きなケヤキの丸太が積んであります。
実際に加工する感じは、よく云われるように硬い木ですが、硬いが故にもろいといった感もあります。(超硬鋼と似ていますね。)ちょっと切れてない刃で削ると逆目は掘るし、欠けは出るし、かといって刃の通りが悪いわけではないというなんか気難しい材です。肥えたケヤキの赤身はヤニっ気がけっこう強くて丸ノコ、トリマーなどの回転刃物で加工するときに刃にヤニがくっついて難義するときもあります。においも独特のケヤキ臭さがあります。
仕上がり感はやっぱりケヤキという品のある、紅く木目が鮮やかで重厚な感じが「本物を知るダンディー(こんな言葉使わん)な紳士」の雰囲気といったところ。
一言でいうとちょっと手強いけれどやりがいありってやつかな?(これはケヤキに限らんやろ!)

ケヤキ板目写真
ケヤキの板目
ケヤキ写真
ケヤキの柾目

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