« 掲示板まとめについて | メイン | ルーター選びのご相談 »

スクレイパーについて

kinokoubou.comの掲示板への書込みをまとめてみました。




山野 さん 2006年 06月 04日 13時 41分 01秒
URL:http://www.yamanorg.com/

diary、6月3日に記述された、スクレーパー、スクレッパー、scraper……?に関するコメント。

日本の木工技術関係の書籍には、スクレイパーに関する使用説明は皆無と言える。「木工の手工具」(理工学社)に、奈良時代に使用された、こそぐ用工具があったとの記述がある。現代では木工には一般的に使用されていると思われる。宮本氏や他の作家による使用解説が参考になるだろう。欧米の技術書には普通に記述され、木工家には必修の習得技術となっている。

パソコン通信時代には時々、スクレイパーに関する話題があった。私は、鉋を使用するよりもスクレイパーを多く使用する。堅木には有効ではあるが軟材では役立たない。

20数年前、国内でこの工具を入手するのは困難であったが、今は普通にこの工具は購入出来る。以下の販売業者や、東急ハンズで販売されている。

http://www.off.co.jp/plsql/ocp_item_tools_search3?p_daibunruic=1&p_chubunruic=2





管理人@KAKU さん 2006年 06月 05日 12時 31分 20秒
>山野さん
スクレイパーへの情報ありがとうございます。
やはり、ドイツなど欧米の木工では、普通に当たり前の木工道具ということなんですね。

宮本氏のパソコン通信時代の記事のバックナンバーや鯛工房の葛城氏のチップ&トリックの記事でもその有用性をご解説くださって参考になります。
その頃から、皆さん結構日本でも普通に使われていらっしゃるのでしょうか。

今更概知なことですが、木工における広葉樹文化と針葉樹文化での仕上げ道具の発展の違いということなのだと思いますが、洋家具とその製法が日本に入ってきた時代には、この道具に関してはどのように取り上げ、解釈をされたのでしょう。(いつもの悪いクセで、好奇心で余談になってしまい申し訳ございません。)





山野 さん 2006年 06月 05日 19時 25分 24秒
URL:http://www.yamanorg.com/

>KAKU さん
私は国内で木工修行を全く行っていません。1980年末に帰国し、国内の木工関係者との交流はなく独自の製作活動をしておりました。1990年代になり、パソコン通信時代に宮本氏らとの交流の中で、国内の木工事情を聞き知る事が多くなりました。ですから、1980年以前の国内木工技術に関する知識は持ってはおりません。スクレーパーに関してはルクセンブルグで初めて、先輩家具職人から直接使用方法を教わりました。1973年に一時帰国した時に、国内で入手可能な工具を調べ、欧州から持ち帰らなければならない工具を少しずつ買い揃えました。その中に、スクレーパー、フォスナービット 、クランプ、洋鉋、ナイフ、スイス製彫刻刀などのがありました。逆に欧州の職人達には日本の鋸、砥石などを紹介したりしました。スクレーパーは国内で何時頃から普及し始めたのでしょうね。





管理人@KAKU さん 2006年 06月 06日 06時 50分 27秒

>山野さん
補足説明いただきありがとうございます。

宮本さんのパソ通時代の記事のバックナンバーを拝見いたしますと、あの当時、交流という意味では、かなり中身が濃かったようですね。
インターネットに舞台が移ってからは、どちらかというとwebサイトなど個々からの発信が多く、いろいろな情報を入手しやすくなった反面、チャット的な交流の場としての役割が薄れてきているような気がします。(すみません唐突に関係のないネット論になってしまいまして……。)
いろいろな方のお話をお伺いすると、80年代半ばから90年代にかけての、この頃が工房家具の聡明期のように思います。
各地で、外国から木工家を招いた研修を開かれていたり、パソ通が普及しはじめたり、それまでと比べ、かなり交流が盛んになったのではないでしょうか。
そういう時代を背景に、現在は極普通に使われているPONYに代表されるパイプクランプ等の海外の木工ツールが交流の中で広がりはじめ、その流れにスクレーパーも含まれるのではないかと、勝手に推測してみました。
スクレーパーというのは、多分、写真のワンカットを見ただけではなにをやっているのか意味がわからないと思いますので、実際に使い方、刃の付け方、切削原理を直接教わるか、少なくとも作業を動いている状態を見られる状況でようやく普及すると思いますと、そのあたりの時代背景が大きく関わるように思います。
タマクラフト、offコーポレーション等が、海外の工具を日本で販売し始める流れもそこに切っ掛けをみているとも思いますし……。

あくまで推測ですので、どなたかその頃のお詳しいお話をご存じの方がいらっしゃいましたら、どうぞお話をお聞かせください。

あと、例えば、松本民芸、横浜クラッシック家具、神戸クラッシック家具等の、日本における洋家具の発祥とされている現場の今昔では、どうなのでしょう。





artisan さん 2006年 06月 06日 07時 55分 15秒
URL:http://blog.artisan.boy.jp/

スクレーパーで賑わっていますね。私も使用頻度は低いものの時折出動願うことがあります。
2つのケースがあります。
1つは南京鉋の切削能力を超える小さなR部分の切削。2つには3次曲面の面取りの仕上げ切削の時などですね。
これが何を意味するかと云えば、日本には優れた鋼製造文化を背景とする鉋(台鉋)がありますので、スクレーパーのようなaboutな道具の発達はなかったと見ることが出来ます。

しかし近代に入り、洋家具の伝来以降、洋家具の製作職人とともに、このスクレーパーも導入されてきたのでしょう。
私の1人の親方は横浜の洋家具の職人だった人ですが、器用にスクレーパーを使います。
しかし皆さんが使われるSandvicのような既製のものではありません。帯ノコの1部(製材用の分厚いもの)をカットしたものが基本ですが、時には鉄ノコの刃をカットして使う時もありました。
さらにユニークなのは、ガラスを割って、その不定型な面の適合するところを探し、目的とする3次曲面の面取りに使用する、といったところに日本の洋家具の導入における自家薬籠中を見る思いでした。

最後に刃(エッジ)の付け方ですが、専用の工具もありますが、欧米の職人のやり方を見ますと、何でも良いのですが焼きの入った鋼があればできます(釘締め、など)





宮本 さん 2006年 06月 06日 10時 47分 52秒

スクレーパーの話題で出てまいりました(^^)。

刃のつけ方は、いろいろやりましたが、今はTageFrid氏の本にある方法とほとんど同じです。専用の道具は使わずに、ノミの裏の角を使います。
「完璧な直角を作って、まず水平にバリ(カエリ)を出し、次にそれを直角に折り曲げる感じ」です。私は手の力がそんなに強くないので、ノミの角など、接触面積が小さい方が、鋭いバリがでるように思います。「ヤスリだけで充分使える」という方もおられ、あまり真剣にバリを出すことを考える必要はないかもしれません。

 難しい木の仕上は、私のようなアマチュアに毛の生えたような者には、どうしても無理な場合があり、そんな時のお助けツールとして必須の道具になっています。





管理人@KAKU さん 2006年 06月 07日 08時 36分 11秒

>artisanさん(でよろしいですか……?)
こんにちは。
スクレーパーの情報ありがとうございます。
artisanさんも、実際にお使いになられることもあるのですね。
当然のこととお叱りを受けてしまうかもしれませんが、この話題でもこれだけの情報の引出しをお持ちでいらっしゃるとは、知識の奥深さは、やはり流石です。

>横浜の洋家具の職人だった人
やはり洋家具の流れの中で、日本でもお使いになられる職人さんがいらっしゃった訳ですね。
ちなみに、松本のほうでも、同じように使われているのでしょうか。


>宮本さん
ご参戦ありがとうございます。(笑)

前のほうで少しパソ通時代の記事を話題にさせていただきましたが、今においてネット上で検索される範囲ですが、スクレーパーについて詳しい解説と有用性が記述されているのは、鯛工房の葛城氏の記事と、あとは数える程なのですが、語るまでない程、普通に普及している木工道具ということなのか、それとも、about(笑)すぎて、日本人の感性に合わずに、未だ使てる人は使てる的なツールなのでしょうか。

極端な例えですが、カンナがあれば語るまでもない道具かといえば、実際に使ってみれば、ケースバイケースで活きる道具だと思いますので、逆に先入観を捨てて使ってみることでうまく作業は捗ったという自分のような例もありますし……。

今でこそ、これだけ木工の裾野が広がりつつある中であれば、お助けツールとしての出番は広がりそうだとも思います。

ただ、使い出はaboutな割に、見よう見まねだけで使うも難しい(一見ただの鉄板ではあるけども、その実はちゃんと刃返りという刃がついているというところ)、微妙な感どころのある面白い独特な道具だと思います。
(欧州の楽器製作の現場を放映したテレビ番組でスクレーパーを使っているのをみて、あの鉄板で何をしてるのかと思っていたという声も聞きます。)

もし、10年前の話題をぶり返しておりましたら申し訳ございません。





木工房オーツー:大江進 さん 2006年 06月 07日 09時 01分 07秒
URL:http://www.e-o-2.com/

私は本格的なスクレーパー使用の経験はありません。わりあい直線的またはシンプルなデザインが多いのと、硬木の使用頻度はそれほど高くないので、鉋で間に合います。ただたまに小物や椅子などで立体的な三次曲面が出てきたときは、ふだん使っているノミではない古いノミや、折損した鋸などで掻取り作業をすることはあります。
 スクレーパーやサンディングはミクロ的に滑らかな表面を作ることはできると思いますが、マクロの平滑面はやはり定規面が付いた刃物=鉋のほうが適しているのではないでしょうか。ただせっかく情報を得たので、これを機会に私もスクレーパーをいろいろ試したみようと思います。





管理人@KAKU さん 2006年 06月 08日 07時 38分 07秒

>大江さん
こんにちは。
勿論、台ガンナでできることは台ガンナでやるほうが合理的だと思います。スクレーパーは、台ガンナとは、別の用途の道具と考えていただいたほうが取っ付きやすいかもしれません。(って、スクレーパー初心者が云うのもなんですが……笑。)
刃返りの具合で、綺麗な削り屑で削れたり、粉みたいな木屑しかでなかったりするようですので、ものは試しで、もし機会があれば是非。





artisan さん 2006年 06月 08日 21時 13分 27秒

【あらためて「スクレーパー」使用状況について】
松本民藝家具の商品群は「李朝様式」「伝統的和家具」の他にも「欧米の伝統的家具に出自を持つ家具」というものも含まれます。いえ、実はこちらの方が多いと見て間違いないでしょう。ウィンザー様式の椅子を中心とするテーブル、キャビネット類です。
しかし私の知る限り、「欧米の伝統的家具に出自を持つ家具」制作においても「スクレーパー」は用いられることはないでしょう。松民の職人は皆、鉋(平鉋、南京鉋)を完璧に使いこなせるので「スクレーパー」のようなaboutな道具は不要です。
さて本来「スクレーパー」は平面の平滑仕上げ切削、曲面の成形切削、などに用いられるものと思いますが、平面の平滑仕上げ切削に用いるにはかなりの熟練した技が求められると思います。(ほとんど平滑切削にならずに局所的に抉られるような切削になってしまう)したがってせめて次のようなジグを用いることが平滑に仕上げるための前提になるかもしれません。
http://www.woodcraft.com/family.aspx?FamilyID=3225
http://www.woodcraft.com/family.aspx?FamilyID=3967
しかし日本では優れた伝統的な道具の台鉋というものがありますので、「スクレーパー」の熟練に励むよりも鉋の熟練に励む方が真っ当で、近道です。
その上で有用な使い方を考えると、3次曲面、不定型な面取り、あるいは南京鉋が掛からないような曲率の曲面などの切削にご登場願うということになるのではないでしょうか。
あるいは気乾比重が1.0に近い唐木など、鉋で切削することの困難な場合には有用です。(これも日本の鉋群に立鉋、というものもありますがね)
 このようなところで冗長になりましたこと、お詫びします。





山野 さん 2006年 06月 09日 00時 21分 55秒
URL:http://www.yamanorg.com/

スクレーパーの話しが続いてるので、もう少し書きましょう。国内の書籍中で記述を見た記憶があり探しましたら、「木工具・使用法」(秋岡芳夫監修)の最後の頁にありました。宮本氏が紹介された書籍 "Teaches Woodworking"(Tage Frid)にはDVD付属版があり、スクレーパーの仕立てや使用解説が見られます。ちょっと高価ですが、良い参考になります。昨年出版された「木工技術」シリーズ全6冊(Albert Jackson and David Day)、日本語に翻訳された書籍ですが、この中にはスクレーパーに関する事は何も書かれておりません。このドイツ語版には解説があるのですが、全く異なる編集になっています。"Handbuch der Holzbearbeitung"が書籍名です。スクレーパーはドイツ語で "Ziehklinge"と言いますが、一般の独和辞典には訳はありません。木工専門書にはこの単語はあります。"Ziehen"(引っ張る)と"Klinge"(刃)の合成語です。日本語訳「木工技術」の編集には不満があります。6冊に分冊され、重複する記述が多々あり、1冊税別3200円と非常に高価です。内容的には従来の木工技術書にはない、欧米の木工技術が多数紹介されていて、参考になるのですが(スクレーパーの記述なし)。

国内ではスクレーパーが軽んじられている様ですが、愛用者としはこの非常に有用な工具は手放せません。木理が複雑に交差したり、框構造で木目が直行している時、逆目、突板表面、湾曲面など、スクレーパーの出番は多いです。私は木工家はスクレーパーの習得は必須だと思います。





管理人@KAKU さん 2006年 06月 11日 11時 29分 45秒

>artisanさん
>山野さん
スクレーパーについての追加情報をいただきありがとうございます。
お陰さまで、今まで知らなかったことを沢山知ることができましたし、道具における役割というのを、あらためて考える機会になりました。

>スクレーパーは用いられることはないでしょう。
逆に松本のほうでは、使われていないという訳ですね。
松本民藝の場合、その成り立ちのベースとなっているのが日本の木工芸の技術であり、その技術的ベースのあるところに洋家具を落とし込んだということからも、確かにそれは十分理解できるものですね。

>鉋の熟練に励む方が真っ当で、近道です。
い、痛いところを……。(笑)
耳の痛いながら、またそれは、木工制作者として真摯に受け止め、向いあわなければならないお言葉だと思います。

それを十分前提と理解したうえで、
>私は木工家はスクレーパーの習得は必須だと思います。
という、またバックボーンが異なる木工制作者の先達のお言葉として、十分受け入れられるものだと感じています。

例えば古来からの道具に対する徹底したこだわりでなく、先入観や偏見、また知らないということで使われないのであるなら、それは勿体無い話だと思います。

ここでサンディングペーパーを引き合いに出すと、またかえって抉じれてしまうかもしれませんが、あえて言えば、荒目のペーパーに匹敵する切削力を持ちながら、切削表面の滑らかさから次の仕上工程への以降のしやすさというのも、この道具のメリットであるように思います。
単品制作で、専用の道具を誂えるまでもないまでもない局面(曲面と掛けたりして……つい悪いクセで申し訳ございません。)など、ケースバイケースで、スクレーパーという木工道具がひとつ工具箱に増えるというのが、単純かもしれませんが素直なのではないでしょうか。
(なんて、なんで勝手に話をまとめてるのよ……?)





さえ。。 さん 2006年 06月 12日 07時 30分 48秒

スクレーパーについて、わたしの所も先代は横浜洋家具の出なのですが、わたしが物心着いた頃にはクラシック物などは主力ではなくなっていた為か、使用している所も、スクレーパーその物も見たことは有りませんでした。

しかし、メラミン貼りの時などに、まだトリマーなどが普及する前にはノミの角や金鋸の刃の背などで仕上げたりしましたので、もしかするとスクレーパーの技法の名残だったのかも知れません。

天板などに、少し大きめのメラミン化粧版をゴム系糊で貼った後、ノミの刃の角の鋭利な部分で切りこんで(カッターナイフで数回切り込むように)ふかくキズがついた所で折り。端面を45度に取る時に、カンナで取る場合も有りますが、ノミの横の部分や金のこの背でシゴイて取ります。

現場作業などであまりゴミを出したくない時など、トリマーのように
ゴミを撒き散らす心配も無ければ、電源を引く必要も無いので重宝です。


……まとめここまで。

◆スクレイパーに関するリンク

工房通信 悠悠 | 鉋 vs スクレーパー
http://blog.artisan.boy.jp/?eid=511686
(その2)
http://blog.artisan.boy.jp/?eid=512396
(その3)
http://blog.artisan.boy.jp/?eid=512931
(その4)
http://blog.artisan.boy.jp/?eid=513541

The Woodchuck's workshop > 工具 > スクレイパー

家具制作鯛工房 > 家具制作資料室 > チップ&トリック > スクレパーの使い方

Ryohei's Woodworking > 木工講座100連載 > WWMおじさんの木工講座(80)スクレーパー

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kinokoubou.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1161

コメントを投稿