ちいさな工房の毎日を綴ります。
題して
「ふつうの木工家?のふつうの日々」

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2010年12月31日

“木の工房KAKU”というのをやめる訳

先日のセンセーショナルな宣言のあと、言葉足らずだったため、いろいろな解釈が独り歩きしたりもしていたりするので、
これからについて、ここに至ったことなど、
自分なりの言葉ですが、説明させていただきます。

少しお話しが長くなりますので、先に最も重要なことから申しますと、

これまで、木の工房KAKUの活動を見守ってくださった皆さま、
これから、
受注、制作等の基本的な活動につきましては、賀來寿史として、これまでどおり普通に続けます。

現在、お請けしております受注につきましても、これまでどおり制作させていただきます。
ただ、のちほど説明させていただく事情により、納期が限定されてしまうお仕事に関しましては、状況によりお請けできない場合がございます。

また、これまで制作させていただきましたアイテムに関しまして、メンテナンス等のアフターフォローもこれまでどおりさせていただきます。

木の仕事の会、木工家ネット、木工家ウィークといった繋がりの活動につきましても、引き続き関わらせていただきます。

それじゃあ、なにがこれまでと違うのかということも含めまして、
すこし長くなりますが……、

ここ何年か、昨今の社会情勢、個人的事情などの為、家業である材木屋の仕事も業務のひとつに加えなくてはならない必要があり、時間的な制約も増え、それゆえ、これまでの活動だけに専念できない事情となり、納期のことでご迷惑をおかけしている現状があります。

家業が材木屋というと、一見、聞こえも良いですが、扱う商材が、丸太杭や横矢板という土木に特化した資材ということもあり、時代の流れに呑まれ、けっして楽観できる状況でもありません。

そもそも家業と別のつもりで始めたものの、時代、お互いの年代の変化もあり、全く関わりなく生きるということも考えにくくなってきての苦渋の選択でもありましたが、自分の中に、この仕事も取り入れていくのに、行き場のない葛藤があることも正直な気持ちでありました。

いろいろと現実的な整理をつけないといけない中で、心の整理がつかずに、この一、二年は、もやもやとネガティブに時間を過ごしていました。

それでもやはり、木のモノづくりが心の中心にあることは変わらない自分がそこにあることに気づいた時、それを中心に置きながら、それ以上のことを素直に、身の回りの現状を受け入れようということに気持ちが向き、顔を上げた時に、心の整理方法のひとつとして、『木の工房KAKU』っていうのをやめてみたら……ということを、ふと思いました。

もともと、10年前に始めた頃は、ごく自然にまわりの風潮に倣い、はじめに『木の工房KAKU』という工房名を名乗り、いわゆる家具工房として発展成長をせんと、紆余曲折をし続け、企業化や組織化ということも考えたりしたこともありましたが、この10年間で自分自身が進んでいる方向、進みたい方向は、なんだかそういうことでは無いようでした。
そして、なんとか工房(木の工房KAKU)という、枠組みを自ら名乗ることで、気持ちに枠をつくってしまっていたり、自分を縛ってしまっていたのかもしれません。

だから『木の工房KAKU』という家具工房になるためにつけた屋号、ブランド名を今の状況で第一義に名乗ることもないんじゃないだろうか……と。そもそも、不器用で両極端な自分が何枚も看板をもって、その都度、気持ちを切り替えるより、まず、全部ひっくるめて自分(賀來寿史)となることがすべてを受け入れられる理由になるんじゃないだろうか。

なんと申しますか……、看板を降ろすとか、廃業するとかでなく、自分的には、『木の工房KAKU』という殻から脱皮することで、いろんな物事が、すんなり受け入れられる気がした訳です。

所詮、気持ちの問題ですが、されど気持ちの問題でもあって、そうしようと思ったときから、なにか憑物が落ちたように、心の中が整合されていく気がしました。

ひとりの木工人として、人の使う道具を制作することはもとより、

木工家の世界とその仕事を広く社会に認知していただく為に、木工家同士の関係を構築したり、
広くいえば、社会、自然、地域活動、といったこととも関わって

自分に関わる繋がりを自分自身と結びつけながら生きていく為に、人間・賀來寿史としてあるのが、これからのあり方としては、適しているのかもしれません。

頭でっかちの自分らしい、頭でっかちな理屈になってしまっていますので、まあ実際に活動しながら答えを見いだしていくほかないかもしれませんが……。

と、いうことで、
“木の工房KAKU”というのをやめる訳はそんなとこ。

投稿者 KAKU : 2010年12月31日 00:00

 

■木の工房KAKU■
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